【写真日記】少し中野を歩く、それと北京亭の思い出
体調が悪くて何もやる気にならなかったときに、なぜか中野をふらついていた。目的もないし、何かを見るとかもしなかったんだけど。
以前中野に住んでいた人が「中野は誘惑が多すぎて家にまっすぐ帰れない。」と言っていて、飲み歩くのが好きだったらほんとそうだよなぁっていうのは凄くよくわかる。それに憧れて中野に住みたいなと思ったことは多々あったんだけど、自分の生き方の根本の部分ではそういう行動が必須ではなかったので実行はしなかったし、しなくて後悔はしていない。
この中野の雑多なエリアの中に、かつて北京亭というお店があった。
名前の通り、北京料理屋さん。北京料理と言われても、僕も「これだ」っていう定義は言えないのだが、まぁ、中華料理屋さん。
僕が行くようになったのは、閉店する数年前くらいからで、80代の夫婦で切り盛りされていた。旦那さんが厨房で料理をして、奥さんが接客。1階にカウンター席と少テーブル。2階が団体で入れる席。この2階がなんていうか凄くアットホームで、田舎の祖父母の家っていう感じの場所。本当に普通のタンスの中から箸とかが出てくるし、ちょっとした飾り物とかもまさに「あー、こういうのうちのばーちゃんちにもあるわぁ。」っていう人形とかちょっとした小物。
料理はとにかく絶品だった。豪華であったり、みためがお洒落であったりっていうのではなく、ただただ素朴に美味しい料理。そして大満足のボリューム。
一品一品が、お皿にどっさりと盛られている。
春巻きとか餃子が人気なのだが、それ以外でも、そして僕が一番好きだったメニューが肉団子。ゴルフボールよりも二回りくらい大きい肉団子で、外はカリッと中はジューシー。甘酸っぱいあんかけか、塩コショウで頂く。
厨房に立たれていた旦那さんはとても気さくな方で、奥さんはとてもとても可愛い方だった。凄い小柄なおばあちゃんなんだけど、注文した瓶ビールなんかをトトトって軽やかに階段を登って運んでくれる。
ずーっと、あの場所であの二人でやってきたんだなぁって考えると、自分自身の半世紀後を考えるととても羨ましいしああなってみたいなって心から思った。
中野くらいお店が密集していて、かつ歴史もあると、こういうお店って見つかるんだけど、これからどんどん無くなっていってしまうんだろうなと思う。
正直ご飯を食べるのに開放感のある店内とかオシャレなお皿に盛りとか興味無いんだよね。カフェ飯とか気取らなくていいし、変に格好つけたランチプレートじゃなくて定食でいいと思っている。
特に飲食店に対して感じるんだけど、デザインとやらでいくらでも"空間"ていうのは演出できるし飾れたりするけれど"空気"を作ることは決してできないと思っている。
まーだから、今はまだ"空間"がいいと思われるだけの場所に、そんな"空気"が少しずつ宿っていくっていうケースはあるのかもしれないけれど。
それにしても素人目だけれども、そこまで考えたデザインとか、そこまで見据えたその場における人っていうのを考えているケースがどれくらいあるのか?っていのは悲観的になることが多いのだが。
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