funny rain, sweet breathing

知ってるか?世の中って思った通りにしかならないんだぜ?

病気を知る、に留まらず、正しく知るということを学び取る『こわいもの知らずの病理学講義』

こわいもの知らずの病理学講義

こわいもの知らずの病理学講義


古巣ではないがまぁ、古巣の近所な本を久々に読んだ。所謂専門書をガチで読み込む気力は無い。あたし今はただの薄給フロントエンドエンジニア。

病理学ということだが、病気についてである。病気のメカニズムと言うべきか。それはつまり、体を知るということ、細胞を知ると言うこと、遺伝子を知ると言うこと。

“近所のおっちゃんおばちゃん”に読ませるために書いたそうだ。その目標と現実の解離は否定はできない。が、そもそも膨大な知の積み重ねを正しく身につけることを、ある程度の強度すらも受け入れることなく実現できるなんて思ってる方がおかしいんじゃねーのと思う。

とはいえ、読み進める上で必要な細胞生物学に関する章なんかは地味に難しいのではと思わなくもない。もうちょいイラストとか視覚的に情報をインプットできる作りであれば。変に擬人化したものとかそういうのは理解の促進に繋がらないから不要だが。

本書の中で最も大きなトピックはがんである。世の中のがん予防だのなんだのなんて駄文と嘘に目を通す前に、この本のがんに関する章を読むべきだ。それで明日からがん予防ができるわけでもなんでも無いが、「こういうものか」と淡々と相手の正体に関する知識を身につけられる。

正しく物事を知るというのは、強度を求められる動作だ。それを考えれば、世の中の健康情報が逆説的におかしいと感じ取れるはずだ。全てが因果関係で繋がり、一対一対応で原因と解決策がある。「これを飲めばがんも脳卒中心筋梗塞も良くなります!」なんてのが、いかに世の中から駆逐すべき嘘であるか。そういう想像をすることができる思考を身につける。

著者は本書の中で頻繁に、言葉の定義をまずは広辞苑から引用している。内科学の分厚い小難しい専門書は大勢が持っていなくとも、広辞苑ならアクセスは容易い。

わかんないことはまず辞書を引く、そんな小学生でも習うようなところから始めているあたりは専門家ではなく一般人に向けてちゃんと書いているといえる。

ロジックは枝葉に捉われなければとてもシンプルで、言葉の定義だけはおさえてくれ。そういうメッセージを発してくれているのだから、読み手はそれを実行してみるべき。

新たに出会った言葉の定義は知らない領域に足を踏み入れる際につまづく要因の一つ。そして、知らない人を騙す為にもこの要因は活用される。でもそこは辞書引こうぜと言ってくれているのだ、この著者は。

わからなかったらとりあえず辞書引いてみる。これは寝る前に歯を磨くくらい誰もが習慣化してもいい。今の時代においてもね。頭を使うという視点においてもググるよか時間対効果は高い。

良い悪いや、怖い怖くない等の感想や印象ではなく、それそのものがどんなものであるのか?というメカニズムを淡々と知る。その為には未知なる言葉の定義を正しく調べて、適度なレベルに把握する。そうすることで、難解な言葉に目を塞がれて見えなかったシンプルなロジックが見えてくる。

病気のことを知る以外に、もっと根本的な知るということについて学ぶ本である。