funny rain, sweet breathing

知ってるか?世の中って思った通りにしかならないんだぜ?

自転車漫画「はやめブラストギア」は、ぶっ飛びロード漫画ではなく王道冒険譚である

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弱虫ペダルを始めとするロードバイク系の漫画、シャカリキ!やろんぐらいだあず、OVER DRIVE・・・、挙げるともっとたくさんあるのだが、2巻まで刊行中の「はやめブラストギア」も、新たな自転車漫画の一つとして自分の中にインデックスされるかなと思っていた。

が、この作品は確かに自転車レースを題材にしているとはいえ、ロードバイクの漫画ではなく、ジャンルとしては歴史のある冒険譚的なストーリーが構築されているなーという感想を抱いた。

  • 主人公はやめはロードバイクが趣味の女子高生
  • たまたま"裏ロードレース"に参加することになってしまう
  • 裏ロードレースでは各地の峠を牛耳る"王(キング)“を倒していく
  • この裏レースのルールとして勝者は敗者の自転車パーツを一つ奪うことができる
  • 裏レースに勝ち続ける中で、はやめは行方不明の父の存在を匂わすパーツの存在に気付く
  • 父への手がかりとなる自転車パーツと情報を求め、一度は戦ったキング達と共に新たな峠を目指す

ざっくり言うとこんな感じで話が進んでいく。

実在の地名として関東付近に住んでる自転車乗りには馴染みのある峠が登場。

とはいえ別に自転車でなくても、峠でなくても、中ボスとなる(ゲームで言えばストーリーを進める中でクリアするダンジョンとそのボスみたいな)存在を倒して新たな力(今回は自転車パーツ、もしかしたら7つ揃えたら願いが叶う変な玉でもいいかもしれない)や次の目的地を示す情報が手に入る。

最初はただ訳あり行方不明であったはやめ父の存在が、各地の峠にいるキング達の断片的な話や残された自転車パーツ(チート性能かつはやめ父が絡んでいる)と出会う事で、父の存在ははやめの中では大きくなりつつも謎は深まり距離は縮まっているのかすらわからない。

ロードバイクって、スポーツとしての楽しさに加え、どこにどのパーツを使うかっていうのをあれこれ考える楽しみがある。カスタマイズ魂を揺さぶるわけ。好きな選手と同じものだって使えるし、同じパーツを使っても同じように走れるわけではない難しさ。パーツが良ければ純粋に強くなるわけでもなく。

戦いに勝利して新たなアイテムを手に入れてパワーアップしていく・・・そういうお話とロードバイクってのはなかなかに良く馴染む。

作中で描かれる裏ロードレースや各登場人物の必殺技的なやつだけを見ていたらただのぶっ飛んだロードバイク漫画ではあるが、ファンタジーやSFな世界観でも紡がれる冒険譚の中の1つの戦いとして見ればなんも突っ込まんでも楽しんで読むことができる。自転車漫画として弱虫ペダルがダメなところを挙げるならば、現実的なものを誇大にした描写に見せかけて「いや実際ねーからっ」ってさじ加減の描き方が多いところ。最近の中身の薄め過ぎとか、まったく魅力のない第2世代のキャラとかはとりあえず置いておき。

最終的には各地のキングを倒すことで(あるいはそれ以外の展開で)手に入れた、自身の父が絡んでいるぶっ飛び性能のパーツ満載のロードバイクで再会した父と勝負するのか。それとも、もっと別の強敵に対して父の思いが託されたチート性能のパーツ満載のロードバイクで戦うのか。それくらいわかりやすく物語を進めてくれても全然いいけど、なんでもいいや、今後も楽しみな作品。

テンポがいい(各キングとのバトルは結構短いページ数で終わる)し、結果として個人的には実地に行ったことのある峠なんかでもサラッと描かれて終わっているのが残念ではある。が、それは多分"自転車漫画"を期待している自分がいてしまっているということだろう。主役は別に峠とかそこで行われる自転車レースではないということで。


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