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知ってるか?世の中って思った通りにしかならないんだぜ?

【観てきた】マッドマックス 怒りのデス・ロード(絶叫上映)、実は王道英雄譚の傑作

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去る4/7。

毎年1回、ライブハウス借りて友達の友達くらいまでの範囲でバンドを集めてライブイベントを開催するっていう遊びを行っている。主催側としての準備と自分の演奏の練習、当日の打ち上げまで騒いでボロボロになった翌日。

こういう時は頭の中身を空っぽにして、何も考えないでも楽しめる映画を観るのが個人的にはベストな時間の使い方である。そういえば自分の結婚式の後に、1年弱にも渡る規模大きめなプロジェクト完遂の空っぽ感を楽しみつつ、確か変態仮面2を観に行った。脳みそいっさい使わない、さいこー。

HK/変態仮面

HK/変態仮面

今回行ったのは池袋の新文芸坐でやっていた絶叫上映の、『マッドマックス怒りのデス・ロード』。この作品自体、ずいぶんと話題になっていたようなのだが実は見ていなかった。火を噴くギターとかV8エンジンを讃えないといけないとかそういう断片的な話だけは入ってきていて、同じく断片的に目にする映像からカーチェイスとガンファイトな北斗の拳・・・そんなイメージができあがっていた。

絶叫上映というやつも存在は知っていたし、実際に行ったことのある奥様から話は聞いていたのだが、行くのは初めて。奥様が行ったことがあったのがバーフバリだったのだが、なんかサリーをまとってキンブレとうちわを両手に装備して出かけていった。インドのジャニーズコンサートかよと思ったのはここだけの話。

マッドマックスの絶叫上映の場合、特に前もって情報を集めて準備して・・・とはしなかったんだけど、「顔を白く塗る」「持ち込めるだけクラッカーを持ち込む」というなんだかよくわからない不穏な言葉を家庭内で聞いた気がした。

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当日の上映前の様子ですが白いですねなるほど。ハンドアックスとか自動小銃とか持っている人もいた。あとすれ違うときはV8を讃えるポーズをとったり。現代社会では絶滅危惧種となってきたV8エンジンが、文明崩壊後の世界では讃えられてますよ。V8エンジンを再び製造しまくる世界観というよりは、厄祭戦時代のガンダムフレームやらを発掘してレストアして使ってるのに似たノリだろうか。

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クラッカー。持ち込みはお一人様20個まで持ち込みOKで、会場でもどっさり売っていて、1個2個ならフリークラッカーがあった。一人20個という制限は、制限かけなくて大勢が大量に持ち込むと消防署に怒られるとかで。弾薬畑っていうのは劇中でちらっと言葉だけ出てくるネタ。

さて、で、本編。

ちら聞する情報的におバカ映画なのかと思ったけど、そんな事もなくかなり作り込まれた作品であった。映像にはなっていない(=1度観ただけだと謎というか察しきれない)世界観とか設定とかが随分ありそうな感じ。

実際には、きっとそんな深い世界観を持ち、それでも銀幕に映る部分というのは極力シンプルに削ぎ落とした部分のみで構成された至極の映像とでも言えばいいか?大げさか。

舞台は広大な砂漠ではなく、ウォータンク(だっけ?)という主人公達の駆る1台の車それのみと言ってもいい。観客が見続ける砂漠の距離や広さ、イモータン・ジョーの砦の巨大さ等を見せつつも、実際はそういった世界の中を走る1台のトラックが本質的にはこの物語の舞台であるってやつよ。それを徹底する潔さ。

ストーリーそのものは、大塚英志の言葉(なのかな)を借りれば、完全に『行きて帰りし物語』という、王道であり原初の物語構造をきれいに取っている。とはいえ一筋縄に行きて帰りし物語というわけではなく、そういった構造の物語として行きとは違う(成長なり何なりした)主人公が英雄として帰ってくるものではなく、帰りしはヒロインで、ヒーローは帰らない。この二人の対比もこの映画のストーリー、世界観の一つのポイントなんだろう。

V8エンジンとか、火を噴くギターとか、作品の内容云々ではない(わけでもないけど)キャッチーな掴みどころで気を引きつつも、観てみたら、芸術的な美しさで複雑をサンディングしつつも我が道を行くダイナミックさを失わず存分に発揮したストーリーを楽しませてくれる。

そんな秀逸な作品であった。